3.各部品の違いと使い分け

部品の中には見た目や機能が似ている物があり、どの部品を選んだら良いのか迷うことは少なくありません。
例えば、「ある設問に対しユーザーに回答してもらう」という機能を実現する時、様々な回答方法や表現方法が考えられます。
キーボードで入力してもらうか選択肢の中から選んでもらうか、また、入力欄や選択肢の見せ方はどのようなものがいいか等、ユーザーにとって便利な方法を模索する必要があります。
良いアプリを作るために、実現したい機能に対し効果的で分かりやすい方法は何かを考慮しながら、適切な部品選びをしていきたいところです。

以下で、機能や見た目が似ている部品について具体的にどのように使い分けたらいいのかを説明していきます。

(1)選択項目をリスト表示にしたいとき
リストボックスとドロップダウンリストとコンボボックス
(2)選択項目と選択状態を常に表示したいとき
チェックボックスとラジオボタン
(3)複数の項目を選択可能にしたいとき
リストボックスとチェックボックス
(4)必ず1つの項目のみ選択させたいを選択させたいとき
ドロップダウンリストとラジオボタン
(5)1つの設定項目に対して選択肢が2つのみのとき
チェックボックスとトグルボタン

(1)選択項目をリスト表示にしたいとき

リストボックスとドロップダウンリストとコンボボックスどれを選ぶ?

リストボックスとドロップダウンリストとコンボボックスは、どれも選択項目を縦にリスト表示させる部品です。
リストボックスは、選択項目がある程度見えている状態なので、大体どのような項目があるのかが分かりやすいという利点があります。
一方、ドロップダウンリストとコンボボックスは、クリックしないと選択項目の内容が分からない状態ですが、選択項目が多い場合はこの2つの方が見た目がスッキリし、画面のスペースも有効活用できます。
さらにコンボボックスは、直接文字等を入力することもできるので、ユーザーが選択項目以外で自由に入力することを許可したい場合はコンボボックスを利用する方が良いでしょう。

Point

・選択項目の内容を最初から表示させておきたい場合はリストボックス
・画面の表示スペースを節約したい場合はドロップダウンリストかコンボボックス
・選択項目以外の内容を入力可能にしたい場合はコンボボックス

(2)選択項目と選択状態を常に表示したいとき

チェックボックスとラジオボタンどちらを選ぶ?

チェックボックスとラジオボタンは、どちらも“選択項目の内容”と“項目が選択されているかどうか”が一目で確認できます。
基本的に各選択項目に対し、「複数選択」と「選択無し」を許可したい場合はチェックボックスを使用し、「必ず1つの項目だけを選択させたい」場合はラジオボタンを使用します。
アンケートの設問で例えると、「あなたの好きな果物:リンゴ、バナナ、ぶどう、桃」について、リンゴとバナナの両方好きな人は2つ選択することもでき、そもそも果物が好きじゃない人は1つも選ばないという可能性もあるので、チェックボックスが適切です。
逆に、「あなたの年齢:20歳未満、20代~30代、40代~50代、60歳以上」等は、2つ選択することはあり得ない上、必ずどこか1つの項目に当てはまる内容なので、ラジオボタンが適切です。

Point

・選択項目の中から「複数選択すること」と「選択しないこと」を可能にしたい場合はチェックボックス
・選択項目の中から「1つの項目のみを必ず選択させたい」場合はラジオボタン

(3)複数の項目を選択可能にしたいとき

リストボックスとチェックボックスどちらを選ぶ?

リストボックスとチェックボックスは、どちらも複数項目の選択が可能な部品です。
リストボックスは、アプリにもよりますが「Ctrlキー」または「Shiftキー」を押しながらクリックする必要があるという不便さや、複数選択が可能であることが分かりづらいという欠点があります。
そのため、操作性や分かりやすさを重視する場合はチェックボックスの方が便利です。
しかし項目数が非常に多い場合は、チェックボックスは無駄にスペースを取ることになり、視認性も悪くなります。
その点リストボックスは、項目を表示する範囲を指定し、一度に表示しきれない項目はスクロールバーを付けて使用することができるので、項目数によって使い分けると良いでしょう。

Point

・操作性や分かりやすさを重視する場合はチェックボックス
・選択項目数が多く表示範囲を指定したい場合はリストボックス

(4)必ず1つの項目のみを選択させたいとき

ドロップダウンリストとラジオボタンどちらを選ぶ?

ドロップダウンリストとラジオボタンは、どちらも複数項目の中から1つの項目のみを選択させる部品です。
ドロップダウンリストは、選択項目のリストを初期状態で収納しておけるため、項目数が多い場合に使用するのに適しています。
項目数が多い場合にラジオボタンを使うと、広いスペースが必要な上、見た目も煩雑な印象になってしまいます。
ラジオボタンは、常時全ての選択項目が表示されている状態のため、項目内容を分かりやすく見せたい場合に適しています。
また、ドロップダウンリストはクリック(またはタップ)しないと項目が表示されない上、状況によってはスクロールしなければ全項目を見れないため、ユーザーにとっては手間になってしまいます。

Point

・選択項目数が多く、見た目をスッキリさせたい場合はドロップダウンリスト
・全ての項目内容が一目で分かり、操作をより簡単にしたい場合はラジオボタン

(5)1つの設定項目に対して選択肢が2つのみのとき

チェックボックスとトグルボタンどちらを選ぶ?

チェックボックスとトグルボタンは、オプションの「ON/OFF」等、ある設定項目に関する選択肢が2つある場合に使用されます。
チェックボックスを使う場合、設定項目について選択した後、「更新」「送信」等のボタンを別途用意し、変更を適用させる動作が必要になります。
選択した内容を確定する前に再度見直すというアクションが可能になるため、変更前に複数の設定項目の状態をユーザーに再確認してもらいたい状況等に適しています。

例えば、パソコンの環境設定の場合、セキュリティの一般タブ内でスクリーンセーバや画面ロック等の各項目を変更し、続けてプライバシータブ内で位置情報や音声認識の状況を確認した後、一度に変更を適用できるように、ここではチェックボックスを使っています。
逆にトグルボタンは、設定項目について選択した後、即時変更を適用したい場合に使います。
電気のスイッチをONにするとすぐに電気がつくように、変更が適用されたということを即座に確認したい状況に適しています。
パソコンの環境設定では、通知設定でアプリの通知許可をONに変更すると、さらに通知に関する詳細項目(通知のスタイルや通知音等)を設定できるようになり、通知許可をOFFに戻すと詳細項目がグレーアウトします。
このように、通知設定が現在ONなのかOFFなのかが一目で分かった方が良い場合はトグルボタンを使用します。

Point

・複数の設定について選択後、状態を確認した上で一度に変更適用させたい場合はチェックボックス
・1つの設定について選択後、即座に変更状態を適用させたい場合はトグルボタン

4.まとめ

ここまで、アプリ画面の各部品の名称や機能、使用例、使い分けについて説明してきました。
似ている部品でも一つひとつに違いや特徴があり、アプリ内で実装したい内容や場面によって、適切な部品が変わるということをご理解いただけたでしょうか。
また、同じ部品を指していても様々な呼び名があるため、画面に関する打ち合わせをする前に、メンバーの中で使う部品名を統一しておくと、話し合いが一段とスムーズに進むと思います。
アプリ製作および画面設計に関わる方にとって、本記事が“ユーザーにとって使いやすいアプリ”を実現する一助になれたら幸いです。