市販のソフトウェアを買ってきてすぐに使えるケース
用語の定義には諸説あると思いますが、比較する製品やサービスの位置づけ、及び参考文献の用途を明確にするために、意味をなるべくはっきりさせていきたいと思います。
前章では、買ってきてすぐに使える「業務ソフト」と、組織的に検討して導入する必要のある「業務システム」とを区別しました。
本章では、その中間の場合のシステム導入方法について(もしくはその境界線の定義について)考察していきます。
この問題について一般的な定義があるわけではないので、主に私の経験に基づいて解説します。対象とする業務は販売管理などの基幹業務です。
まず、結論から申し上げますと、以下のケースを除いては、一旦「組織的な検討」(やり方については後述)をされることが無難なのではないかと考えます。
買ってきてすぐに使えるケース
財務会計
財務会計の分野に関しては、法律で定められていることが多く、利用する会社独自の仕様を盛り込む余地があまりありません。ある程度大きな規模の会社になると、内部統制への対応や、独自の管理帳票が必要になるため、市販のソフトを買ってきてすぐに使うというわけにはいきませんが、経理業務を1人で担当している会社や、税理士に依頼している会社の場合には、市販のソフトで十分なケースがほとんどのようです。
労務(勤怠・給与)
出退勤管理や給与計算についても、法律で定められた部分が多いので、市販のソフトウェアやクラウドサービスなどをそのまま適用できるケースが多いようです。シフト管理・要員計画や人事管理まで対象を広げると「組織的な検討」が必要な分野に近づいていきます。
加工を伴わない商品の在庫管理を前提とした販売管理
比較的小規模の卸売業・小売業のように「商品を仕入れ~在庫として持ち~加工せずに販売する」という条件にあてはまる場合には、販売管理の分野について、市販のソフトを買ってきてすぐに使うことができるようです。
パッケージソフト適用と新規のシステム開発
初めて業務システムを導入する企業は、おそらくほとんどが最初にパッケージソフトを探すのではないでしょうか。
それは主に以下のような理由だと考えます。
(1)パッケージソフトの方が低コスト
(2)自社に合うものが既に世の中にあるはず
(3)具体例を見ないと分からない
そのうち、(1)については必ずしもそうならないです。(2)については、当たりはずれがある世界です。(3)については理解できます。
そこで問題なのは、(2)の「合うもの」が「たまたま」見つかれば(1)の低コストが実現するということで、不確実性が高いにもかかわらず、最初からパッケージソフトありきで話を進めてしまい、新規のシステム開発を選択肢から除外してしまうことです。パッケージソフトを探す手間もそれなりにかかるため、途中であきらめてしまう原因になります。知り合いの会社で「5年ぐらい探し続けてやっと合うものを見つけた」という方もいます。
新規のシステム開発を選択肢として残しておくと、どのようなメリットがあるでしょうか。実は、システム開発の方法論をパッケージソフト導入の場合にも適用することができます。インターネットや書籍等で文献を探しても、パッケージソフトの適用について解説しているものはあまり見当たりませんが、システム開発の方法論は見つかるはずです。本記事で紹介した「共通フレーム2013」は、システム開発に限定せず汎用的に使えるようになっており、一度目を通す価値があると思います。
さきほどの「(3)具体例を見ないと分からない」といった問題についても、昔からシステム開発の現場で扱われてきたことなので、抽象的な概念をまとめてから段階的に具体化していく方法を参考にできます。
また、妥当な価格で導入できるというメリットもあります。先に具体的なパッケージソフトを並べて価格を比較してしまうと、どうしてもそれが導入費用の基準となってしまいますが、新規のシステム開発も視野に入れて抽象的な概念を先に検討すると「この条件を満たすシステムを導入すればこれだけの導入効果が見込めるため、このぐらいの導入コストなら回収できる」といった予算の考え方ができるようになります。投資に対して効果が上回らなければ「投資しない」という冷静な判断をすることができます。業者との交渉においても先手を打てるため、精神的にもかなり楽になるでしょう。